皆さんパスカルの三角形はご存知でしょうか。
1段目には1を1つ、2段目には1を2つ、3段目以降は両端に1を置き、間の数は上段の2数を足し合わせて作る三角形のことを言います。
こうして作られた三角形の形をしている数の並びをパスカルの三角形といいます。
この三角形には不思議な性質がいくつも存在することがわかっています。当記事ではそのうち7個をご紹介したいと思います。
本題に入る前ですが、当記事ではパスカルの三角形の行と列を以下のように定めています。
では本題へ行ってみましょう。
組み合わせのnCkの値が表れている
まず1つ目として、有名なのがパスカルの三角形に並んでいる数字を見たときに、上からn行目、左からk列目の各値が\({}_n \mathrm{ C }_k\)の値になっているということです。
ただしここのnとkは0から数えるので注意しましょう。
三角形の数値を以下のように書き換えてみるとわかりやすいかと思います。
\({}_5 \mathrm{ C }_3\)の値が知りたいけど、計算するのが面倒というときにこの三角形を書いて、上から5行目の左から3番目の値を参照することで\({}_5 \mathrm{ C }_3=10\)が簡単にわかります。
これは高校で組み合わせの勉強をするときとかに学ぶことも多いみたいですね。
(x+y)のn乗の係数になっている
2つ目の性質はパスカルの三角形のn行目に表れる数列と\((x+y)^n\)の係数が一致するというものです。
前項の画像の通りパスカルの三角形のn行目に表れる数列を見てみると、
\({}_n \mathrm{ C }_0, {}_n \mathrm{ C }_1,…,{}_n \mathrm{ C }_n\)
となっていることがわかると思います。
また、\((x+y)^n\)を展開すると2項定理から以下のようになります。
\begin{split}
(x+y)^n&={}_n \mathrm{ C }_0x^ny^{0}+{}_n \mathrm{ C }_1x^{1}y^{n-1}+…+{}_n \mathrm{ C }_nx^0y^{n} \\ \\
&={}_n \mathrm{ C }_0x^n+{}_n \mathrm{ C }_1xy^{n-1}+…+{}_n \mathrm{ C }_ny^{n}
\end{split}
この係数を前から確認していくと、
\({}_n \mathrm{ C }_0, {}_n \mathrm{ C }_1,…,{}_n \mathrm{ C }_n\)
となっています。これはパスカルの三角形のn行目に表れる数列と同じですね。
例えばパスカルの三角形の3行目は
となっていて、\((x+y)^3\)の展開は
\((x+y)^3=x^3+3x^2y+3xy^2+y^3\)
となりここにも関係性があると言えます。
2のべき乗
次はパスカルの三角形を行ごとに足し算をしてみましょう。すると2のべき乗の値が表れます。
すると、
という風になっていて、n行目の数の和が2のn乗になっています。
\((x+y)^n\)の\((x,y)=(1,1)\)を代入すれば簡単に示せますね。2項定理から以下のように展開されます。
\begin{split}
(1+1)^n&={}_n \mathrm{ C }_0\cdot{1^n}\cdot{1^0}+{}_n \mathrm{ C }_1\cdot{1^{n-1}\cdot{1^1}}+…+{}_n \mathrm{ C }_n\cdot{1^0}\cdot{1^{n}} \\ \\
&={}_n \mathrm{ C }_0+{}_n \mathrm{ C }_1+…+{}_n \mathrm{ C }_n
\end{split}
また、数列\(\{{}_n \mathrm{ C }_0, {}_n \mathrm{ C }_1,…,{}_n \mathrm{ C }_n\}\)はn行目の数列なので、
n行目の数列の和\(={}_n \mathrm{ C }_0+{}_n \mathrm{ C }_1+…+{}_n \mathrm{ C }_n=2^n\)
11のべき乗
次は11のべき乗も表れるという話です。
以下のように横に並んだ数字をそのまま並べてみましょう。
すると、11のべき乗が表れました。4行目までは出せましたが5行目以降は2桁以上の数が登場しますので以下のようにしてみましょう。
繰り上がりを計算することで11の5乗以降もしっかりと表れていることがわかります。
ある数とその数の2乗
パスカルの三角形の三角形にはある数とその数の2乗が表れています。
三角形の2列目の数を1つとその右の数と右下の数を見てみましょう。
以下は2列目の2とその右の1と右下の3にマークを付けてみました。
この3つの数には\(2^2=1+3\)の関係があることが勘のいいひとなら気づくかと思います。
1~4までですが確認してみるとちゃんと先ほどの関係が成り立っています。
フィボナッチ数列が表れる
パスカルの三角形からフィボナッチ数列が作れます。
フィボナッチ数列といえば\(a_{n+2}=a_{n+1}+a_n\)で表せる数列で、前項と前々項の和が次の項になっているというものですよね。
フィボナッチ数列:\(1,1,2,3,5,8,13,21,…\)
将棋の桂馬を動かすように三角形に線を引いてみます。すると…
各線上にある数の和がフィボナッチ数列になっていることがわかります。これは驚きですね。
他の数列も隠されている
簡単に見つかる数列がもう一つあります。
次は1から4列目に線を引いてみましょう。
1列目は何の変哲もない1だけが並ぶ数列ですね。2列目は自然数が並んでいる数列です。
では、3列目は\(1,3,6,10,15,…\)となっていますがどんな数列になっているのでしょうか。
三角形の形に石を積み上げていくのを思い浮かべてみてください。
すると\(1,3,6,10,15,…\)となり、3列目の数列と一致することがわかります。ちなみにこのように正三角形状に石を並べた場合の総数を三角数といいます。
では4列目の\(1,4,10,20,…\)は何になるのでしょうか。
先ほどは三角形状に石を積み上げましたがそのまた上に石を積み上げてみましょう。
すると、また\(1,3,6,10,15,…\)となり、三角形の4列目と一致しました。ちなみにこちらは三角錐状に積み上げているので三角錐数と呼ばれております。
最後に
パスカルの三角形に関する7つの性質はいくつ知っていましたか?
パスカルの三角形にはまだまだほかの性質もあるかもしれないので、探してみるのも面白いかもしれません。